普通に日本語を話す

「普通においしい」「普通に嫌い」「普通に言う」などの表現に違和感がある。自己の判断を述べる際に,なぜわざわざ「普通に」と付けるのか。どういう意味で普通だと言っているのかよくわからないし,そもそもそんな疑問が浮かぶ以前に,響きに違和感がある,とも思う。

でもここで正しい日本語がどうのという話をする気はない。

「やっぱり」という言葉がある。この言葉をまったく使わないという人はあまりいないと思うし,よく耳にする言葉だが,それはどういう意味かとあらためて考えてみると,これもまたはっきりしない。

「やっぱり」とは何か,ということについては森本哲郎『日本語 表と裏』に面白いことが書いてある。日本人はとかくみんなと同じでなければならないと思いがちで,周りと異なる存在になることを恐れる。そういう傾向を持っているから,何か意見を述べるときにも単に自分はこう思いますと言うだけではなくて,これは異質な意見でも何でもなくて,自分はみんなと同じことを考えているのですと言いたがる。そこで「やっぱり」と付けることで,世間一般の人たちがそう思っているのと同じように,自分もそう思います,というニュアンスを出すのではないか。そんなようなことが書かれている。

普通に,と言うのもそういう意識があるからじゃないだろうか,と思うと腑に落ちる気がした。やっぱり日本語なのだ。