数学の本の話

数学の本はアウトラインがわかればあとは自分でよく考えるだけで本を閉じたまま詳細を構成することができる。しかし数学以外の本はそうとは限らない。例えば歴史の本は歴史の大まかな流れがわかっていても細部を自分の頭で考えても埋めることはできない,気がする。仮にそれらしく埋めたとしても,正しいかどうかを自分で確認することは難しい。

数学の本の詳細(普通は証明が大部分を占める)が自分で構成できるとは,本の中身を見ることなく本に書いてある通りのことが自分で書けるということではない。本に書いてあるのと同じ結論に至る,論理的に正しい詳細が書けるということだ。自分で考えて書いてみた結果が本に書いてある内容と全く同じになるとは限らない。長い証明などは同じになることのほうが珍しい。しかし,自分で書いたことの詳細が本に書いてあるものと一致するかどうかは,ほとんどの場合には問題ではない。この場合に問題なのは,結論が論理的に正しく導かれているかどうかだからだ(あんまり本文の方針から外れてしまうと,後で理解に不都合が生じる可能性はあるが)。