真空中を音が伝わる速さ

「真空中を音が伝わる速さはおよそ 340m/s である」という主張は正しいか正しくないかということを,ちょっと前に道を歩いていたらふと気になって考え始めたことがあって,そのことを今日思い出したので記録。

まず大前提として,真空中を音が伝わることはない,という事実があります。これを踏まえたうえでこの文の真偽をあえて考えるとどうなるか,という話です。したがってこの文は,有名な「現在のフランス国王は禿である」と同じタイプの主張を述べたものである,と考えられそうです。*1

大雑把に考えて次の二つの解釈があるでしょう。

  • (1) 「もし真空中を音が伝わるならば,その速さはおよそ 340m/s である」
  • (2) 「真空中を音が伝わり,かつその速さはおよそ 340m/s である」

「真空中を音が伝わる速さ」という名詞句の指示対象が存在することを,仮定と読むか主張の一部と読むかの違いです。それぞれの場合の真偽はどうなるかというと,普通に(直観主義論理で)考えて,(1) と読めば真,(2) と読めば偽になるでしょう。

ここに書いたことだけだとフランス国王の場合と何も変わらない気がしますが,まったく同じ構造というわけではないような気もするので,もうちょっと議論の余地があるのかもしれません。

*1:と書いたところで,じゃあこれ以上新しく解説することはないのではと思いましたが,せっかくなのでちょっと書きます