数学は可能な限り一般的であるべきか

ある論文を読んでいて,「集合 X の部分集合族 K が与えられたとする。このとき〜」と書いてあって,その後には K を用いた概念が定義されているのだけど,その部分を最後まで読んでも何を意図しているかよくわからなかった。もっと先を読んでみると,どうやら定義された概念が論文中で使われるのは X が位相空間で K は X の開基になっている場合だけのようだった。そして,K は開基なのだと思ってもう一度定義を読めば,「何だ,そういうことか」という内容だった。

ということがあって,一般的にできることは常に一般的な形で書くことがよいことなのだろうか,ということを考えた。不要な条件はなんとなく書きたくない,という気持ちになることはよくある。だから,そういう書き方をしたくなるのもわかる。でも,可読性を考えれば不必要な一般性は排除したほうがいいように思う。上の場合だったら,最初から X は位相空間で K はその開基とする,と書いてしまったほうがいい。論理的には必要でなくても,適当な条件が文脈として提供されていれば理解の助けになるというケースはよくある。それだったら,はじめからその条件のもとで議論したほうが,読み手にとってはわかりやすい。